
ここ近年エルメスのスカーフが好調です。
エルメスといえばスカーフ という最強黄金時代までとはいえませんが、バッグのハンドルに巻くツイリーが一昨年は店頭での在庫がほとんどなくなるほどでした。
一般的なブランドのコートのお値段にも劣らない定価約16万円。カシミアシルクの大判のストールも人気です。
ツイロンと呼ばれるロングタイプのツイリー、張り感が得意のシルクツイルにウォッシュ加工を施して一度洗ったようなやわらかさとエイジ感を出したカレウォッシュなど新商品も発売されています。
多様化する要望にお応えするという形ではなくエルメスは巻き方、使い方を提案するために新商品を作っていくスタイルです。使い方のアイデアを教えてくれるハンドブックやアプリもあり、そのアイデアは斬新なものも多く、現状にとどまらない常に進化しているエルメスが感じられます。
ご存知のかたも多いと思いますが、エルメスのスカーフは4代目社長となる「ロベール・デュマ」が今から80年ほど前の1937年に手がけたもの。
↑この「デュマさんは直系ではなくお婿さんです」
2003年デビューのツイリーとカシシル
バッグやネックに巻いていた45cmのプチスカーフを更に軽く細身にして使いやすくしたツイリーも2003年にデビューした商品ですが、発売当時はそれほど注目度が高かったわけではありませんでした。バッグのハンドルに巻き始めてからというものの 「アレンジが楽しめて、バッグのハンドルが汚れない」 いいことづくしでこんなに人気になりました。
シルクツイルのなめらかさ、発色の良さにカシミヤのやわらかさと保温性を加算して巻きやすさが計算された大判140cmサイズのストールカシシルも2003年に発表された商品です。
エルメスのスカーフやストールは上質なシルクやカシミアを使って作られていますが、その素材の混紡の比率や織りかた、サイズで目的に適したさまざまな製品のバリエーションがあります。
今回はいちばん使われている素材「シルクツイル」にフォーカスしてみたいと思います。
シルクツイルの種類とサイズ
現在、シルクツイル製スカーフの種類は主なものだけでも
スリムなタイプから
・3cm×193cm ツイロン 細いけど超長っ
・5cm×86cm おなじみツイリー
・20cm×160cm マキシツイリー
巻いたときのボリュウーム感がちょうどいい平行四辺形のロサンジュ
・48×114cm MMサイズ
・76×191cm GMサイズ
正方形のカレでは
45cm、55cm 70cm 90cm 140cm
とお好みに合わせて選び放題、バリエーションも豊富です。
シルクツイルのツイルって?
ツイルとは 「綾織」 のこと。
糸を生地にする際に 代表的な織りかたとして
・縦糸と横糸が交互に現われる 平織り
・縦糸と横糸を1回または2回飛ばして織った 綾織り
・縦糸と横糸を飛ばして、その飛ばした部分が隣り合わないように織った 繻子織り の3つがあります。
文字で書いてもよくわからないのでリボンで実際に織ってみました。

平織り 縦と横が交互に交差しています
平織りは縦と横が交互に交わる単純な織りかたですが、丈夫で、摩擦に強く、糸と糸との空間がとりやすいため、夏素材に向いています。

綾織り 2回飛ばしで編んでいます
綾織りは1回または2回飛ばして編みます。その交差部分は斜めに現われるように規則しています。伸縮性があり、しわになりにくいのですが、平織に比べ耐久力が低く、摩擦に弱くなります。

繻子織り 飛ばした部分が並ばないように
繻子織りはサテン織りとも呼ばれ、表面は縦糸が多く現れます。飛ばして編んでその表に出る部分が隣り合わないようになっています。光沢があり、柔らかいのですが、この中ではいちばん摩擦に弱くなります。

ツイリーをよく見ると織り地のななめ模様が入っています。これが綾織りの特徴です。
どれくらい売れてる?カレ90
エルメスから連想する商品といえば現在は女性用の高額なバッグが多いのではないかと思いますが、かつて売り上げ全体の20%をスカーフが占めていたとも言われています。
バッグや馬具の鞍などに比べてお値段の安めなスカーフですが、販売数量では圧倒的に多く、その中でもシルクツイルのカレ90がトップであることは間違いありません。
最初に発売された時は木版プリントでしたがシルクスクリーンの技術を取り入れて、その絵画のような繊細な美しさが評判となり絶えることなくエルメスでの屋台骨を担っています。
1年に春夏、秋冬で2回 新作を発表していますが、ひとシーズン平均10柄としても・・・この80年の間にいったいどれくらいのデザインが世界に出ていることでしょう。同じデザインから色調をかえて数パターン発売しています。
これまでにいちばん売れたデザインは 「ブリッド・ドゥ・ガラ・Brides de gala/式典用馬具」 で 25万枚のセールス記録がギネスブックにも掲載されているとのことです。
初リリースは1957年、それ以来何度かのリバイバルを繰り返して、この記録となっています。
このブリッド・ドゥ・ガラ をベースにしてハートやドットを散らしたものが一昨年には大変人気になりましたが、他にも単色に変化させたもの、市松のように並べたもの、お花の刺繍をあしらったものなどたくさんアレンジされていています。
60年前に発表されたクラシカルな雰囲気のある鞍屋のエルメスらしいものを再解釈。このギネス記録はどのブランドも永久に破ることはできないことでしょう。

20年前のブリッド

単色になったブリッド・ドゥ・ガラ

ハートを散らしたブリッド・ドゥ・ガラ

タトアージュのブリッド

ツイリーのブリッド
2018年春夏のデザイン
備忘録として2018年春夏のデザインを掲載しておきます。

“Le Grand Prix du Faubourg”
”フォーブルのグランプリ”
エルメス本店の周囲をサーキットに見立てた人気のデザインです。

”Bracelets de Lumiere” 光のブレスレット

”a Maison des Oiseaux Parleurs”
おしゃべりな鳥たちの家

”Sea, Surf and Fun” 海とサーフとファン

”Ex-Libris” エクスリブリス

”Plumets du Roy” 王の羽根飾り

”Guepards Tattoo” チータ

”Rosace de Janos Ber” ロザス

”Clic Clac ” クリッククラック

“Jeu de Cartes” トランプ